いい旅を

前回のマスツーリングの時は環八がガラガラだったので、今回も空いているだろうと高を括ったのが甘かった。

今回は前回より出発が1時間遅いのと土曜日ということもあって、井荻トンネル辺りからかなり込んでいた。それでも何とか給油を済ませて集合場所の海老名サービスエリアに、集合時間の10分前には到着できた。

二人ツーリングに誘ってくれた先輩を待つ間、二輪駐車場の前のベンチに腰掛けていると、どこからともなくお年寄り(お爺さん)が近づいてきて、「バイクに乗るには、いい時期ですね~」と話しかけてきた。私は「はい。でも、もうそろそろ暑いです」と答えたら会話が始まった。

老人: 「そうですね、もう大分暑くなりました。あなたのバイクは、この白いバイクですか?」

 私: 「はい、そうです」
老人: 「排気量は何ccですか?」
 私: 「984ccです」
老人: 「おお、1000cc近いですね。900以上あれば(馬力は)十分でしょう」

 私: 「ええ、パワフルですよ〜!」

ここまでの会話で「この人も昔バイクに乗っていたのだろうな」と直感した。案の定、老人は遠くを見るように目を細めて言った。

    「私も昔、スズキのGT380(ジーティーサンパチ)というバイクに乗っていたんですよ」
 私: 「えっ、私も GT380に乗っていました!」
老人はしわだらけの顔のしわをさらに深くしてニッコリ笑うと、
    「ほほう、そうでしたか、そうでしたか」と言った。
老人: 「私は GT380で日本一周したんですよ」
    「ところが北海道でバイクが故障して、人に譲ってしまいました」
    「今ではプレミアがついて、100万円の価値があると聞きました」
老人: 「ところで、あなたはバイクでよく旅をされますか?」
 私: 「以前はよく旅してましたが、今はあまりしません」
老人: 「そうですか。今日はこれからどちらまで?」
 私: 「沼津に行きます」
老人: 「沼津ならそれほど遠くないですね」
    「いい旅を。お気をつけて行ってらっしゃい」
 私: 「はい、ありがとうございます!」

見ず知らずのお年寄りから、いい旅と安全運転を同時に願ってもらって素直に嬉しかった。

そんな短いバイク談議に花を咲かせていると、ほどなく先輩が到着したので、しばし休憩してもらった後に出発した。東名高速はスムーズだったが、右ルートの高速コーナーではかなりの恐怖感を覚えた。アスファルト路面がやたらと荒れている。恐ろしくバンピーだ。おまけに超強い日差しが、他の車や路面の白線等に反射して眩しい。暗いトンネルに入ると明暗のギャップで、強烈な幻惑感に襲われる。

お年寄りに願ってもらった、安全第一を強く意識して運転に集中する。予想より早く、昼前には目的地の沼津漁港に到着した。和食レストランで新鮮で美味しい海の幸満載の昼食をご馳走になった後、国道1号線を登り、次の目的地の箱根大観山へと向かった。久々のワインディング走行だ。いつの間にかヘルメットの中で「ロング、ロング、ワインディングロード〜♪」と歌いながら走る自分に気づく。

山頂付近では交通量も少なく、修理したフロントフォークの動きが良くなったこともあいまって、気持ちよく走れた。次々と迫りくるコーナを、思い描いたラインでトレースする爽快感を満喫した。山頂で一休み。下界では味わえない清涼感のある美味しい空気を思う存分吸った。

江戸時代に「箱根八里は馬でも越すが」と馬子唄に謳われた箱根路だが、現代のバイクならほんの数時間で越せる。ただし、この日のように道が空いていればの話だが…。

帰路は箱根ターンパイクを一気に下る。かなりの濃霧で小雨も少しだけぱらついたが、むしろ冷んやりして心地良かった。小田原厚木道路もスムーズで、すぐに東名上りライダーとなれた。

今日も概ねツーリング日和だったので、Buell XB9Rの走りを堪能できた。